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Hydrochasma: これまで知られていなかったグループがアジアの医療研究所や海運会社を標的に

攻撃キャンペーンで独自のマルウェアは使用されておらず、オープンソースツールのみを使用していると見られる。

アジアの海運会社や医療研究所が、機密情報の収集が目的と推測されるキャンペーンの標的にされています。この攻撃では一般に公開されているツールと環境寄生型ツールのみが使用されています。

このキャンペーンの背後にいる攻撃者のHydrochasmaは、これまでに特定されたグループとの関連はありませんが、新型コロナウイルス関連の治療やワクチンに関与しそうな産業に関心を抱いているようです。

この活動は、少なくとも2022年10月以降、継続的に行われています。Broadcom Softwareの一事業部であるシマンテックは、このキャンペーンによるデータの流出を確認していませんが、標的と使用されたツールを見れば、このキャンペーンの目的が機密情報の収集であることはほぼ間違いないと思われます。

攻撃チェーン

Hydrochasmaが使用した感染ベクトルは、おそらくフィッシングメールでしょう。マシン上で最初に見られる不審な動きは、被害を受けた組織の母国語でファイル名を付けられたおとり文書です。これはそのファイルがメールに添付されていた可能性を示唆します。

[原語から英語に翻訳されたファイル名] Product Specification-Freight-Company Qualification Information (製品仕様-運送会社資格情報)wps-pdf Export.pdf.exe

履歴書を装った別のおとり文書もあります。

[原語から英語に翻訳されたファイル名] [編集済み] University-Development Engineer(大学開発エンジニア).exe

攻撃者は、1台のマシンで最初のアクセスを行った後、FRP(高速リバースプロキシ)をセットしているのが確認されました。FRPは、NATやファイアウォールの背後にあるローカルサーバーをインターネットに公開するツールです。ここでセットされるのは、Microsoft Edgeの正規の更新ファイルです。

                        %TEMP%\MicrosoftEdgeUpdate.exe

その後、被害者のマシンで%TEMP%\msedgeupdate.dllという別のファイルが確認されます。しかし、このファイルの正体はMeterpreterで、Metasploitフレームワークの一部であり、リモートアクセスに使用できるツールです。

この被害者のネットワークでは、その後も以下を含む他のさまざまなツールが見つかっています。

  • Gogoスキャンツール:  本来はレッドチームが使用するために設計された自動スキャンエンジン。
  • プロセスダンプツール(lsass.exe:  攻撃者がドメインパスワードをダンプするために利用できるツール。
  • Cobalt Strikeビーコン:  コマンドの実行、他のプロセスの注入、現在のプロセスの昇格、他のプロセスへのなりすまし、ファイルのアップロードとダウンロードなどに使用できる市販ツールです。このツールには表向きにはペネトレーションテストツールとしての正当な用途がありますが、常に悪意のあるアクターに利用されています。
  • AlliNスキャンツール:  ペネトレーションテスト用スキャンツールで、イントラネットへの水平方向の侵入に利用できる。
  • Fscan:  一般に公開されているハッキングツールで、オープンポートなどをスキャンすることができる。
  • Dogzプロキシツール:  無料のVPNプロキシツール。

この被害者のネットワークには、シェルコードローダーと壊れたポータブル実行可能(PE)ファイルも配備されました。

このキャンペーンでは、ほかにも以下のような戦術、手法、手順(TTP)の使用が観測されています。

  • SoftEtherVPN:  シマンテックの研究者がこの活動を調査する最初のきっかけとなったのが、このツールの存在です。このツールはオープンソースのクロスプラットフォームVPNソフトウェアで、無料で入手できます。
  • Procdump:   Microsoft Sysinternalsのツールで、アプリケーションのCPUスパイクを監視したり、クラッシュダンプを生成したりしますが、一般的なプロセスダンプユーティリティとしても使用できます。
  • BrowserGhost:  一般に公開されているツールで、インターネットブラウザからパスワードを入手できる。
  • Gostプロキシ:  トンネリングツール。
  • Ntlmrelay:  NTLMリレー攻撃では、攻撃者が検証済みの認証リクエストを傍受して、ネットワークサービスにアクセスすることができます。
  • タスクスケジューラ:  コンピュータ上のタスクを自動化できます。
  • Go-strip:  Goバイナリのサイズを縮小するために使用されます。
  • HackBrowserData:  ブラウザのデータを復号化できるオープンソースツール。

Hydrochasmaが配備したこれらのツールは、被害者のマシンへの持続的かつステルス的なアクセスを実現し、特権を昇格させて被害者のネットワーク内で水平展開しようとする姿勢を示しています。

シマンテックの研究者は、被害を受けたマシンからのデータ流出を確認してはいませんが、Hydrochasmaが使用したツールの中には、リモートアクセスが可能なものもあり、データの窃取に利用できる可能性があります。また、標的にされた業界は、この攻撃の動機が情報収集であることを示唆しています。

この攻撃で独自のマルウェアが使用されていないことも注目すべき点です。現地調達できる環境寄生型ツールと、一般に公開されているツールだけを使用することで、攻撃のステルス性を高めることができ、正体の特定も困難になります。この活動を既知の攻撃者と関連付ける証拠を確認できなかったため、シマンテックはこの活動の背後にいる攻撃者に新しいHydrochasmaという名前を付けました。  

保護/緩和

Symantec Protection Bulletinで保護に関する最新情報をご確認ください。

侵害の痕跡

IOCが悪意のあるもので、シマンテックが入手できるファイルであれば、Symantec Endpoint製品はそのファイルを検知し、ブロックします。

ファイルの痕跡

SHA256

409f89f4a00e649ccd8ce1a4a08afe03cb5d1c623ab54a80874aebf09a9840e5 – 高速リバースプロキシ

47d328c308c710a7e84bbfb71aa09593e7a82b707fde0fb9356fb7124118dc88 – GoGoスキャンツール

6698a81e993363fab0550855c339d9a20a25d159aaa9c4b91f60bb4a68627132 – ドロッパー

7229bd06cb2a4bbe157d72a3734ba25bc7c08d6644c3747cdc4bcc5776f4b5b9 – プロセスダンプツール(lsass.exe)

72885373e3e8404f1889e479b3d46dd8111280379c4065bfc1e62df093e42aba – 高速リバースプロキシ

72bc8b30df3cdde6c58ef1e8a3eae9e7882d1abe0b7d4810270b5a0cc077bb1a – Cobalt Strikeビーコン

7b410fa2a93ed04a4155df30ffde7d43131c724cdf60815ee354988b31e826f8 – 高速リバースプロキシ

7f0807d40e9417141bf274ef8467a240e20109a489524e62b090bccdb4998bc6 – プロセスダンプツール(lsass.exe)

8c0f0d1acb04693a6bdd456a6fcd37243e502b21d17c8d9256940fc7943b1e9a – Cobalt Strikeビーコン

8e32ea45e1139b459742e676b7b2499810c3716216ba2ec55b77c79495901043 – 高速リバースプロキシ

981e5f7219a2f92a908459529c42747ac5f5a820995f66234716c538b19993eb – GoGoスキャンツール

9ebd789e8ca8b96ed55fc8e95c98a45a61baea3805fd440f50f2bde5ffd7a372 – 高速リバースプロキシ

9f5f7ba7d276f162cc32791bfbaa0199013290a8ac250eb95fd90bc004c3fd36 – Cobalt Strikeビーコン

a0f5966fcc64ce2d10f24e02ae96cdc91590452b9a96b3b1d4a2f66c722eec34 – AllInスキャンツール

cb03b5d517090b20749905a330c55df9eb4d1c6b37b1b31fae1982e32fd10009 – Fscan

d1c4968e7690fd40809491acc8787389de0b7cbc672c235639ae7b4d07d04dd4 – シェルコードローダー

de01492b44372f2e4e38354845e7f86e0be5fb8f5051baafd004ec5c1567039f – Cobalt Strikeビーコン

e378d8b5a35d4ec75cae7524e64c1d605f1511f9630c671321ee46aa7c4d378b – PEファイル

eba22f50eedfec960fac408d9e6add4b0bd91dd5294bee8cff730db53b822841 – ドロッパー

fc4b5f2ee9da1fe105bb1b7768754d48f798bf181cbc53583387578a5ebc7b56 – Dogzプロキシツール

02fe00ffd1b076983f3866c04ca95c56cef88c2564fabb586e11e54986e87ba7

084d1fc4236011d442801e423485c8e58f68dc14ec0a8b716fa0fd210de43dda

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d92c50a91bd5b2f06f41a9a5f9937e50b78658d46e3cd04bc3a85f270ce288c2

dc3b714fd6f93c0c0cd2685b6b8cd551896855474bdd09593b8c6b4b7ab6bac2

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ebc3dabf0a2dafb0790be6dbb4d3509b5ce1259b955172910618a32627b3b668

ee9aefde33ed48d16ecb1c41256fc7d93ddfa8bedfa59b95e8810282ac164d0d

f35b206fe10ad3f57d9c4ecf71a2d2cc06d7c7fe905e567b989f72f147da99dc

f73738e6e33286657cda81f618a74b74745590915a8f4451e7c00473cbe89e1d

fc8a67b80b0b0ecd10dfd90820ffc64923b94c32b04dbb6929a79b9ce027563c

ffdcf74968805e9cc897ca932e4da0f22ea7b3e9b96fcc9082c0c5300ae4cb0d

ネットワークの痕跡

IP

39.101.194[.]61 – Cobalt StrikeビーコンのC&C

47.92.138[.]241 – Cobalt StrikeビーコンのC&C

106.14.184[.]148

180.119.234[.]147

ドメイン

alidocs.dingtalk[.]com.wswebpic[.]com – Cobalt StrikeビーコンのC&C

csc.zte[.]com.cn.wswebpic[.]com – Cobalt StrikeビーコンのC&C

taoche[.]cn.wswebpic[.]com – Cobalt StrikeビーコンのC&C

URL

hxxp://47.92.138[.]241:8090/update.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/agent.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/update.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/ff.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/aa.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/runas.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8090/a.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/t.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/po.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8080/t.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8899/t.exe

hxxp://47.92.138[.]241:8000/logo.png

hxxp://47.92.138[.]241:8080/t.png

hxxp://47.92.138[.]241:8000/frp.exe

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