Lancefly APTグループ、カスタムバックドアで政府や航空部門などの組織を標的に
バックドア「Merdoor」、普及率は低く、非常に標的を絞った攻撃で使用
Lancefly APT(高度標的型攻撃)グループはこの数年、カスタム仕様のバックドアを使用して、南アジアおよび東南アジアの組織を標的に攻撃を続けています。
Lanceflyはいくつかの既知のグループとつながりがある可能性がありますが、その信憑性は低く、Broadcom Softwareの一部門であるシマンテックの研究者の間では、今回の活動を新しいグループ名で分類しています。
Lanceflyのカスタムマルウェアは、「Merdoor」と呼ばれる強力なバックドアで、2018年から存在していると考えられます。シマンテックの研究者によると、2020年と2021年の一部の活動だけでなく、最近でも2023年第1四半期まで続いていた今回の活動でも使用されていたことが確認されています。この2つの活動の背景には、機密情報の収集が動機としてあると考えられています。
バックドアの使用は非常に限定的で、数年間でほんの一握りのネットワークと少数の機器でしか判明していません。そのような使用状況から、非常に標的を絞っているものと考えられます。また、この活動の攻撃者は、ZXShellルートキットの最新バージョンにもアクセスすることができます。
2022年半ばから2023年まで続いている今回の最近の活動では、南アジアと東南アジアを中心とした政府、航空、教育、通信などの部門が標的になっています。シマンテックの研究者の間では、2020年から2021年にかけて、同じ地域の政府、通信、テクノロジーの部門を標的にした活動で、Merdoorバックドアが使用されているのを確認しています。今回の最近の活動と同様、感染した機器の数はわずかで、当時の活動も非常に標的を絞っていたような印象でした。
Merdoorバックドア
Merdoorはフル機能を持つバックドアで、2018年から存在していると考えられています。
バックドアには以下の機能が含まれています。
- サービスとしての自身のインストール
- キーログの取得
- C&C(コマンド&コントロール)サーバーとのさまざまな通信手順(HTTP、HTTPS、DNS、UDP、TCP)
- ローカルポートでコマンドをリスンする機能
Merdoorバックドアのインスタンスは、一般的に組み込みおよび暗号化構成の例外と同じで、次のことを決定します。
- C&C通信の手順
- サービスの詳細
- インストールするディレクトリ
バックドアは、正規のプロセス「perfhost.exe」または「svchost.exe」に挿入されるのが一般的です。
Merdoorドロッパーは自己解凍型RAR(SFX)で、次の3つのファイルが含まれています。
- DLL検索順序ハイジャックに対して脆弱な正規の署名付きバイナリ
- 悪意のあるローダー(Merdoorローダー)
- 最終ペイロード(Merdoorバックドア)を含む暗号化ファイル(.pak)
ドロッパーが開かれると、埋め込みファイルを抽出し、正規のバイナリを実行して、Merdoorローダーをロードします。
Merdoorドロッパーの亜種は、5種類ある正規のアプリケーションのうち古いバージョンを悪用して、DLLサイドローディングを行うことが判明しています。
正規のバイナリ | バージョン | 署名日 | ローダー(Merdoorローダー) | 暗号化されたペイロード(Merdoorバックドア) |
---|---|---|---|---|
SiteAdv.exe (McAfee SiteAdvisor) | 1.6.0.23 | 2006年8月10日 | SiteAdv.dll | SiteAdv.pak |
ssr32.exe (Sophos SafeStore Restore) | 1.3.0.1 | 2017年11月17日 | safestore32.dll | safestore.pak |
chrome_frame_helper.exe (Google Chrome Frame) | 27.0.1453.110 | 2013年5月29日 | chrome_frame_helper.dll | chrome_frame_helper.pak |
wsc_proxy.exe (Avast wsc_proxy) | 1.0.0.3 | 2019年10月28日 | wsc.dll | proxycfg.pak |
coInst.exe (Norton Identity Safe) | 2014.7.3.12 | 2014年6月26日 | msvcr100.dll | coinstcfg.dat |
攻撃チェーン
Lanceflyの当初の活動は2020年に始まっています。これは、当時のインスタンスにおいて、第37回ASEANサミットを用いた手口のフィッシングメールが最初の感染ベクトルとして使用された可能性があることを示唆しています。
今回の最近の活動においては、最初の感染ベクトルが十分に明らかになりませんでした。2つの攻撃対象において、最初の感染ベクトルらしきものを示す兆候はいくつか確認しましたが、決定的なものではありませんでした。
- 攻撃対象の1つの政府部門では、最初の感染ベクトルとしてSSHブルートフォースを示唆する兆候がありました。複数のオープンソースのソースにより、今回の活動で攻撃者が使用したIPアドレスの1つが、SSHブルートフォースと関連付けられていたことから、最初の感染ベクトルがSSHブルートフォースでだった可能性を示唆しています。
- 他の攻撃対象では、ファイルパス(Csidl_program_files\loadbalancer\ibm\edge\lb\servers\bin)により、ロードバランサーを悪用してアクセスしていた可能性が示され、最初の感染ベクトルは、公開されている一般向けサーバーであった可能性を示唆しています。
これらの感染ベクトルには、いずれも決定的な証拠がありません。しかし、使用される感染ベクトルに関しては、Lanceflyに適応性があると言えそうです。
マルウェア以外の手法による資格情報の窃取
また、当初の活動(2020年および2021年)と一致している活動として、攻撃者は攻撃対象の機器から資格情報を盗むために、マルウェア以外の手法を数多く使用していました。
- PowerShellでrundll32.exeが起動し、comsvcs.dllのMiniDump機能でプロセスのメモリがダンプされました。これは、LSASSメモリをダンプする際によく使用される手法です。
- SAMおよびSYSTEMレジストリハイブのダンプには、Reg.exeが使用されました。
- Avastの正規ツールは、攻撃者によってインストールされ、LSASSメモリのダンプに使用されました。
さらに、攻撃者は正規のアーカイブツール「WinRAR」の偽装バージョンでファイルをステージングおよび暗号化してから、盗み出していました。
注目すべき攻撃チェーンのツールとTTP
- Impacket Atexec: 悪意のある攻撃者に使用される可能性があるデュアルユースツールです。SMBを使用して、攻撃対象においてリモートで即時のスケジュールタスクを作成および実行し、攻撃対象のシステム上でコマンドを実行することができます。これにより、Lanceflyは攻撃対象のネットワークでの水平移動や、シェルコードの実行および回避が可能になります。cmdline出力ファイルを削除するために使用されている可能性があります。
- 疑わしいSMB活動: 疑わしいSMB活動が、攻撃対象の機器で数多く確認されています。これは、攻撃者によるImpacketの使用に関連していると思われます。
- WinRAR: ファイルをアーカイブしたりzip圧縮したりすることができるアーカイブマネージャで、窃取前などに使用されます。攻撃者が攻撃対象の機器からどのようにデータを盗み出すのかは明らかになっていませんが、Merdoorを介している可能性が高いでしょう。
- LSSAS Dumper: 攻撃者は、認証情報をすばやく盗み、攻撃対象のネットワーク内でさらにアクセスできるようになります。
- NBTScan: オープンソースのコマンドラインNetBIOSスキャナ。ネットワーク上の情報を収集できるようになります。
- BlackloaderおよびPrcloader: APTグループで使用されているローダーです。当初のMerdoor活動(2020年および2021年)でも使用されました。これらはPlugXの配信に関連しています。いずれのローダーも、攻撃対象の機器にサイドロードされると考えられています。これらのローダーが、Lanceflyにより独占的に使用されているのか、複数のグループ間で使用が共有されているのかは明らかになっていません。
攻撃対象で見られる典型的なMerdoor攻撃チェーンは、次のように考えられています。
- Merdoorが、perfhost.exeかsvchost.exeのいずれかに挿入されます。
- その後、通常は不審なSMB活動が確認されます。さらに、バックドアがC&Cサーバーと接続します。
- これに続いて、mavinject.exe(プロセスインジェクションで使用)やcreatedump.exe(LSASSなど、プロセスのダンプで使用)などのコマンドの実行をはじめ、環境寄生型(living-off-the-land)の疑わしい活動が始まります。
- 偽装WinRAR(wmiprvse.exe)ファイルで、ファイルをステージングおよび暗号化します。窃取の前に行われると考えられています。実際のところ、攻撃対象のネットワークからファイルが盗まれたことは確認していません。しかし、Merdoorバックドア自体は窃取目的で使用されていると推測しています。
ZXShellルートキットの技術的詳細
ZXShellルートキットは、2014年にCiscoにより初めて報告されましたが、Lanceflyが使用しているツールはその最新バージョンで、積極的に開発が続けられていることがわかります。このルートキットのソースコードは公開されているため、複数の異なるグループに使用されている可能性があります。Lanceflyが使用しているルートキットの最新バージョンは、小型化しているようですが、機能が追加され、新たなウイルス対策ソフトウェアを無効化することを目的としています。
ローダー
ルートキットのローダーは32ビットDLLで、「FormDll.dll」(SHA256: 1f09d177c99d429ae440393ac9835183d6fd1f1af596089cc01b68021e2e29a7)というエクスポートディレクトリ名を有しています。
以下のエクスポートがあります。
- 「CallDriver」
- 「DoRVA」
- 「KillAvpProcess」
- 「LoadSys」
- 「ProtectDllFile」
「Loadsys」エクスポート
「Loadsys」エクスポートが実行されるたびに、プロセッサアーキテクチャに基づき、次のいずれかのファイルがドロップされます。
- [WindowsDirectory]\system32\drivers\TdiProxy.sys
- [WindowsDirectory]\system64\drivers\TdiProxy.sys
これらのファイルは、悪意のあるWindows Kernelドライバです。これは、数年前にRSAのブログで初めて明らかにされたドライバの亜種です。
PDBファイル名は次のとおりです: c:\google\objchk_win7_amd64\amd64\Google.pdb
サンプルは、次のデバイスを作成します: \Device\TdiProxy0
また、シンボリックリンク「\DosDevices\TdiProxy0」も作成されるため、パス名「\\.\TdiProxy0」で制御することができます。
その後、ローダーが「[WindowsDirectory]\system32\drivers\http.sys」ファイルからタイムスタンプをコピーして、ドロップされたファイルにタイムスタンプを付けます。
さらに、次のパラメータを使用してサービスを作成します。
- ServiceName = "TdiProxy0"
- DisplayName="TdiProxy0"(後に「TdiProxy」に置き換わります)
- BinaryPathName = "[WindowsDirectory]\system32\drivers\TdiProxy.sys"
「CallDriver」エクスポート
「CallDriver」は、悪意のあるKerneドライバ「 “\\.\TdiProxy0” 」によって作成されたもので、次のデバイスを開きます。
DeviceIoControl APIを使用して通信します。
エクスポートには2つの引数が必要です。最初の引数は、 DeviceIoControl APIを呼び出すときに使用する「dwIoControlCode」パラメータを指定します。パラメータは、次のいずれかの文字列にする必要があります。
- "-init",
- "-file",
- "-pack",
- "-port",
- "-removetcpview",
- "-tcpview",
- "-clearall",
- "-clear",
- "-transport",
- "-waitport",
- "-kill",
- "-antiscan",
- "-removeprocessnotify",
- "-setprocessnotify",
- "-antiantigp",
- "-hideproc",
- "-hidekey",
- "-hidefile",
- "-setprotect",
他の値を指定すると、バグのあるdwIoControlCode値のようになります。2つ目の引数は、 MultiByteToWideChar APIによる変換後、 DeviceIoControl APIを呼び出すときにlpInBufferパラメータとして渡す文字列です。
「DoRVA」エクスポート
「DoRVA」エクスポートが実行されるたびに、次のファイルが読み込まれます。
- "[file_directory_of_the_DLL]\Form.hlp"
ファイルはマジック文字列「AP32」で始まり、圧縮形式で実行するシェルコードを含みます。
「KillAvpProcess」エクスポート
実行中のプロセスや選択したプロセスを列挙し、次のパラメータで独自の「CallDriver」エクスポートを呼び出します。
- 第1パラメータ: "-kill"
- 第2パラメータ: "[ProcessID]"
エクスポートでは、実行プロセスの実行可能ファイルと比較して選択できる単一の文字列パラメータが必要です。
「ProtectDllFile」エクスポート
次のパラメータで独自の「CallDriver」エクスポートを呼び出します。
- 第1パラメータ: "-file"
- 第2パラメータ: "[file_path_of_the_DLL]"
続いて、次のレジストリ値を設定します。
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\.ptdf\"ptdffile" = "[file_path_of_the_DLL]"
ロードポイント
これは、PDBファイル名を有する32ビット実行可能ファイルです。 "M:\Project\database\10.0.18362\Form\Release\Form.pdb". (SHA256: 180970fce4a226de05df6d22339dd4ae03dfd5e451dcf2d464b663e86c824b8e)
サンプルが実行されるたびに、次のDLLをロードします。
- "[file_path_of_the_running_executable]\FormDll.dll"
さらに、次のエクスポートも呼び出します。"DoRVA"
インストールおよびアップデートユーティリティ
インストールおよびアップデートユーティリティは、32ビットPEの実行可能ファイル(SHA256:a6020794bd6749e0765966cd65ca6d5511581f47cc2b38e41cb1e7fddaaa0b221)です。Merdoorローダーのコードの中で、わずかですが特徴的な部分が共有されていることから、これらが同じツールセットの一部であることがわかります。
サンプルが実行されるたびに、構成データを含む次のファイルの読み取りや削除が試行されます。
- "[file_directory_of_running_executable]\res.ini"
機能の更新
続いて、次のことを確認します。
- 「\\.\TdiProxy0」のデバイスが使用可能かどうか
- 自身のプロセスがコマンドラインパラメータ「-up」で始まっていたかどうか
両方の確認ができたら、サンプルは「\\.\TdiProxy0」のデバイスでさまざまなウイルス対策製品の改ざんを試みます。たとえば、「egui.exe」、「ekrn.exe」、「msmpeng.exe」のプロセスを終了させることができます。
続いて、ファイル名「[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\res.dat」を次のいずれかに変更します(Windowsのバージョンによって異なります)。
- "[SystemDrive]\Users\All Users\Windows Defender\temp.temp"
- "[WindowsDirectory]\temp.temp".
上記のファイルは、コードの構造に基づきマジック文字列「AP32」で始まり、圧縮形式のDLLファイルを含めることができます。次に、名前を変更したファイル「temp.temp」を解凍します。解凍すると、一時ファイル「temp.temp.pack」が同じフォルダに作成される場合があります。
次に、解凍されたファイルの最後に、「[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\res.ini」(バイトキー「0x12」を含むXORアルゴリズムで一部変換)のコンテンツに続く特定のマーカーを追加します。
さらに、次のレジストリ値も作成します。
- HKEY_CLASSES_ROOT\.udf\"BINTYPE" = [content of "[file_directory_of_running_executable]\res.ini"(バイトキー「0x12」を含むXORアルゴリズムで一部変換)
続いて、サンプルは次のファイルが存在するかどうかを確認します。
- "[SystemDrive]\Users\All Users\Windows Defender\DefenderSvc.dll"
存在する場合、サンプルは最新の「temp.temp」ファイルの名前を変更して、置き換えます。
存在しない場合、置き換えるパス名で次のレジストリ値を確認します。
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\.ecdf\"ecdffile"
確認できなかった場合、設定データのデフォルトを使用します。
最後に、サービス名で次のレジストリ値を確認します。
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\.tudf\"tudffile"
参照したサービスを再起動します。
インストール機能
サンプルは、次のいずれかのファイルで、以下のいずれかでの解凍を試行します
- "[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\google64.p"(64ットプロセッサアーキテクチャ)
- "[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\google32.p"(32ビットプロセッサアーキテクチャ)
解凍結果:
- "[WindowsDirectory]\Microsoft.NET\Framework64\iesockethlp.dll"(64ットプロセッサアーキテクチャ)
- "[WindowsDirectory]\Microsoft.NET\Framework\iesockethlp.dll"(32ビットプロセッサアーキテクチャ)
続いて、次のいずれかのレジストリ値を変更し、対応するサービスをハイジャックする可能性があります。
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\exfat\"ImagePath" = "\??\[PATHNAME_OF_FILE_DECOMPRESSED_ABOVE]"
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\RDPWD\"ImagePath" = "\??\[PATHNAME_OF_FILE_DECOMPRESSED_ABOVE]"
次に、対応するサービスを起動して、レジストリ値を削除します。続いて、「\\.\TdiProxy0」のデバイスでさまざまなウイルス対策製品の改ざんを試みます。
さらに、次のパラメータを使用してサービスを作成します。
- ServiceName: "[PER CONFIGURATION DATA]"
- ImagePath:
- "%SystemRoot%\System32\svchost.exe -k netsvcs"、または
- "%SystemRoot%\System32\svchost.exe -k ntmssvcs"
- Parameters:
- ServiceDll:
- "C:\Windows\Microsoft.NET\Framework64\[PER configuration data]"、または
- "C:\WINDOWS\Microsoft.NET\Framework\[PER CONFIGURATION DATA]"
- ServiceDll:
続いて、次のレジストリ値を作成します。
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\.tudf\"tudffile" = [NAME OF CREATED SERVICE]
続いて、次のレジストリ値を削除します。
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\.ptdf\"ptdffile"
- HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Classes\.ecdf\"ecdffile"
続いて、次のファイル名を、以下のいずれかに変更します。
- "[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\res.dat"
変更後:
- "[WindowsDirectory]\Microsoft.NET\Framework64\[PER CONFIGURATION DATA].back"(64ットプロセッサアーキテクチャ)
- "[WindowsDirectory]\Microsoft.NET\Framework\[PER CONFIGURATION DATA].back"(32ビットプロセッサアーキテクチャ)
上記のファイルは、コードの構造に基づきマジック文字列「AP32」で始まり、圧縮形式のDLLファイルを含めることができます(aPLibで圧縮)。
次に、名前を変更した「[PER CONFIGURATION DATA].back」を「[PER CONFIGURATION DATA]」として解凍します。
次に、解凍されたファイルの最後に、「[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\res.ini」(バイトキー「0x12」を含むXORアルゴリズムで一部変換)のコンテンツに続く特定のマーカーを追加します。
さらに、次のレジストリ値も作成します。
- HKEY_CLASSES_ROOT\.udf\"BINTYPE" = [content of "[FILE_DIRECTORY_OF_RUNNING_EXECUTABLE]\res.ini"(バイトキー「0x12」を含むXORアルゴリズムで一部変換)
最後に、構成データにオプション「OneSelfKey」が含まれている場合、次のいずれかのように、独自の実行可能ファイルの圧縮コピーが作成されます(aPLib圧縮)。
- "[WindowsDirectory]\SysWOW64\nethlp.hlp"(64ットプロセッサアーキテクチャ)
- "[WindowsDirectory]\system32\nethlp.hlp"(32ビットプロセッサアーキテクチャ)。
一部のサンプルでは、アーカイブが最終ペイロードに埋め込まれます。
- "Msrpcsvc.dll"
これは、ZXShellバックドア (SHA256: d5df686bb202279ab56295252650b2c7c24f350d1a87a8a699f6034a8c0dd849) の亜種です。
他のグループとのつながりの可能性
Lanceflyが使用するZXShellルートキットは、「Wemade Entertainment Co.」の証明書によって署名されています。これは以前、APT41(別名Blackfly/Greyfly)に関連していることが報告されています。しかし、APT41などの中国のAPTグループは、証明書を他のAPTグループと共有していることが多いことが知られています。ZXShellバックドアも、以前はHiddenLynxやAPT17のAPTグループによって使用されていましたが、ZXShellのソースコードが公開されている今となっては、この2つのグループ間の決定的なつながりがわかならなくなっています。
また、ZXShellルートキットのローダーコンポーネント名が「formdll.dll」であることや、「Form.hlp」ファイルを読み込み、シェルコードとしてコンテンツを実行できることも注目すべき点です。これらと同じファイルが使用されていたことが、APTグループ「Iron Tiger(別名BudwormまたはAPT27)」の活動を解説した以前のレポートでも言及されていました。このときは、攻撃者がPlugXバックドアを攻撃対象の機器にロードする際に、これらのファイル名が使用されていました。このようなファイルの使用は非常に珍しいことから、当時の活動と最近の活動との間につながりがある可能性も否定できません。
LanceflyもPlugXを使用していることが確認されています。PlugXは、バックドアアクセスやデータ窃取などの多様な機能を備えたリモートアクセス型トロイの木馬(RAT)です。PlugXは10年以上前から存在しています。元々は中国のAPTグループの間で使用されていましたが、現在は非常に幅広く使用されるようになり、活動の属性を示すものとして見ることはできません。
また、ShadowPadも彼らによって使用されています。ShadowPadはモジュール式のRATで、中国のAPTグループが独占的に使用していると考えられています。機能がPlugXに類似していることから、PlugXマルウェアの後継として言及されることもしばしばです。
これらの共通性や共有ツールは、Lanceflyの活動と他のAPTグループの活動との間に何らかのつながりがあることを示している可能性があります。しかし、これらはいずれも、今回の活動やMerdoorバックドアの開発が既知の攻撃グループに起因するものと断定できるほど強力なものではありません。
注目すべきはバックドア。標的を絞った活動
最近のLanceflyの活動で注目すべき点はMerdoorバックドアの使用ですが、このバックドアは普及率が低く、攻撃においては非常に標的を絞った性質があるように思われます。Merdoorバックドアは数年前から存在していたと思われますが、これまでの間に攻撃で使用されたのはほんの数回だけと考えられます。ツールの使用に対するこれほどの慎重さは、気付かれないように活動を続けるというLanceflyの意思の表れなのかもしれません。
使用されているツールも標的となる部門もすべて、この攻撃活動の動機が情報収集であることを示しています。Lanceflyによる最近の活動と以前の活動が類似していることから、彼らは以前の活動が発見されたことに気付いていなかった可能性があると思われます。そのため、2つの活動のつながりについても、気に留めていなかったのでしょう。この活動の暴露が、彼らの活動方法に何らかの変化をもたらすかどうかはまだわかりません。
保護
Symantec Protection Bulletinで保護に関する最新情報をご確認ください。
侵害の痕跡(IOC)
Merdoorバックドア
SHA256 ファイル名 説明
13df2d19f6d2719beeff3b882df1d3c9131a292cf097b27a0ffca5f45e139581 – a.exe-Merdoorバックドア
8f64c25ba85f8b77cfba3701bebde119f610afef6d9a5965a3ed51a4a4b9dead – chrome_frame_helper.exe-Merdoorドロッパー
8e98eed2ec14621feda75e07379650c05ce509113ea8d949b7367ce00fc7cd38 – siteadv.exe-Merdoorドロッパー
89e503c2db245a3db713661d491807aab3d7621c6aff00766bc6add892411ddc – siteadv.exe-Merdoorドロッパー
c840e3cae2d280ff0b36eec2bf86ad35051906e484904136f0e478aa423d7744 –siteadv.exe-Merdoorドロッパー
5f16633dbf4e6ccf0b1d844b8ddfd56258dd6a2d1e4fb4641e2aa508d12a5075 –chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
ff4c2a91a97859de316b434c8d0cd5a31acb82be8c62b2df6e78c47f85e57740 –chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
14edb3de511a6dc896181d3a1bc87d1b5c443e6aea9eeae70dbca042a426fcf3 –chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
db5deded638829654fc1595327400ed2379c4a43e171870cfc0b5f015fad3a03 –chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
e244d1ef975fcebb529f0590acf4e7a0a91e7958722a9f2f5c5c05a23dda1d2c –chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
f76e001a7ccf30af0706c9639ad3522fd8344ffbdf324307d8e82c5d52d350f2 –chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
dc182a0f39c5bb1c3a7ae259f06f338bb3d51a03e5b42903854cdc51d06fced6 – smadhook64c.dll-Merdoorローダー
fa5f32457d0ac4ec0a7e69464b57144c257a55e6367ff9410cf7d77ac5b20949 – SiteAdv.dll, chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
fe7a6954e18feddeeb6fcdaaa8ac9248c8185703c2505d7f249b03d8d8897104 – siteadv.dll-Merdoorローダー
341d8274cc1c53191458c8bbc746f428856295f86a61ab96c56cd97ee8736200 – siteadv.dll-Merdoorローダー
f3478ccd0e417f0dc3ba1d7d448be8725193a1e69f884a36a8c97006bf0aa0f4 – siteadv.dll-Merdoorローダー
750b541a5f43b0332ac32ec04329156157bf920f6a992113a140baab15fa4bd3 – siteadv.dll-Merdoorローダー
9f00cee1360a2035133e5b4568e890642eb556edd7c2e2f5600cf6e0bdcd5774 – libmupdf.dll-Merdoorローダー
a9051dc5e6c06a8904bd8c82cdd6e6bd300994544af2eed72fe82df5f3336fc0 – chrome_frame_helper.dll-Merdoorローダー
d62596889938442c34f9132c9587d1f35329925e011465c48c94aa4657c056c7 – smadhook64c.dll-Merdoorローダー
f0003e08c34f4f419c3304a2f87f10c514c2ade2c90a830b12fdf31d81b0af57 – SiteAdv.pak-Merdoorにコードされたペイロード
139c39e0dc8f8f4eb9b25b20669b4f30ffcbe2197e3a9f69d0043107d06a2cb4 – SiteAdv.pak-Merdoorにコードされたペイロード
11bb47cb7e51f5b7c42ce26cbff25c2728fa1163420f308a8b2045103978caf5 – SiteAdv.pak-Merdoorにコードされたペイロード
0abc1d12ef612490e37eedb1dd1833450b383349f13ddd3380b45f7aaabc8a75 – SiteAdv.pak-Merdoorにコードされたペイロード
eb3b4e82ddfdb118d700a853587c9589c93879f62f576e104a62bdaa5a338d7b–SiteAdv.exe-正規のMcAfee実行可能ファイル
1ab4f52ff4e4f3aa992a77d0d36d52e796999d6fc1a109b9ae092a5d7492b7dd–chrome_frame_helper.exe-正規のGoogle実行可能ファイル
fae713e25b667f1c42ebbea239f7b1e13ba5dc99b225251a82e65608b3710be7–SmadavProtect64.exe-正規のSmadAV実行可能ファイル
ZXShellルートキット
SHA256 | ファイル名 | 説明 |
---|---|---|
1f09d177c99d429ae440393ac9835183d6fd1f1af596089cc01b68021e2e29a7 | formdll.dll | Kernelドライバのローダー |
180970fce4a226de05df6d22339dd4ae03dfd5e451dcf2d464b663e86c824b8e | form.exe | Kernelドライバのロードポイント |
a6020794bd6749e0765966cd65ca6d5511581f47cc2b38e41cb1e7fddaa0b221 | update.exe | Kernelドライバのインストールとアップデートユーティリティ |
592e237925243cf65d30a0c95c91733db593da64c96281b70917a038da9156ae | update.exe | Kernelドライバのインストールとアップデートユーティリティ |
929b771eabef5aa9e3fba8b6249a8796146a3a4febfd4e992d99327e533f9798 | formdll.dll | Kernelドライバのローダー |
009d8d1594e9c8bc40a95590287f373776a62dad213963662da8c859a10ef3b4 | tdiproip.sys | Kernelドライバ x64 |
ef08f376128b7afcd7912f67e2a90513626e2081fe9f93146983eb913c50c3a8 | tdiproip.sys | Kernelドライバ x32 |
ee486e93f091a7ef98ee7e19562838565f3358caeff8f7d99c29a7e8c0286b28 | iehlpsrv.dll | Kernelドライバ x64(旧) |
32d837a4a32618cc9fc1386f0f74ecf526b16b6d9ab6c5f90fb5158012fe2f8c | USBHPMS.sys | Kernelドライバ x32(旧) |
d5df686bb202279ab56295252650b2c7c24f350d1a87a8a699f6034a8c0dd849 | ZXShell |
その他のファイル
SHA256 | ファイル名 | 説明 |
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210934a2cc59e1f5af39aa5a18aae1d8c5da95d1a8f34c9cfc3ab42ecd37ac92 | klcsstd2.dll | 実行可能なShadowPadローダー |
530c7d705d426ed61c6be85a3b2b49fd7b839e27f3af60eb16c5616827a2a436 | comhlpsvc.dll | ドライバと相互作用するクライアント |
5018fe25b7eac7dd7bc30c7747820e3c1649b537f11dbaa9ce6b788b361133bf | comhlpsvc.dll | ドライバと相互作用するクライアント |
efa9e9e5da6fba14cb60cba5dbd3f180cb8f2bd153ca78bbacd03c270aefd894 | searchsrvc.exe | ドライバと相互作用するクライアント |
a5a4dacddfc07ec9051fb7914a19f65c58aad44bbd3740d7b2b995262bd0c09e | comhlpsvc32.dll | ドライバと相互作用するクライアント |
10b96290a17511ee7a772fcc254077f62a8045753129d73f0804f3da577d2793 | a.exe | LDAP列挙ツール |
0dcfcdf92e85191de192b4478aba039cb1e1041b1ae7764555307e257aa566a7 | intel.exe | Mimikatz |
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947f7355aa6068ae38df876b2847d99a6ca458d67652e3f1486b6233db336088 | deliver.exe | HackTool-CMD.exe injector |
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d8cc2dc0a96126d71ed1fce73017d5b7c91465ccd4cdcff71712381af788c16d | browser.exe | インフォスティーラ |
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ファイルハッシュ、簡易リスト
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